考えるタケノコのブロゴ

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ニンジャスレイヤーのまじめなレビュー

TRPGやゴリラでそろそろこのブログの本来の目的が明後日の方向に旅立とうとしているのを感じたので、今回は初心に帰り「ニンジャスレイヤー」のまじめな紹介文を書こうと思います。

1.基礎知識編 ~ニンジャスレイヤーってそもそも何?~

ニンジャスレイヤーは、もともと二人のアメリカ人、フィリップNモーゼズとブラッドレー・ボンドが書いた小説(サイバーパンクニンジャ活劇)です。それをどういう巡りあわせか日本人が拾い上げ、Twitter上で翻訳連載(しかもリアルタイムで!)しているのが現在読める『ニンジャスレイヤー』なのです。

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

 

 どこか複雑でミステリアスな出自を持つ本作は、その作風(後述)から様々な所で話題となり、Twitter上の連載アカウントは2014年6月現在5万フォロー目前。メディアミックスも順調に進み、書籍版発売、ドラマCD化、更に各種コミカライズが3本連載されており、TRIGGER(『キルラキル』や『リトルウィッチアカデミア』で有名な会社!)によるアニメ化も決定しています。

アニメ『ニンジャスレイヤー』公式サイト:http://www.ninjaslayer-animation.com/

 

……こういう風に書くと、作品の中身が気になって来ると思います。次はそのことについて触れたいと思います。なぜサクっとあらすじを書いてしまわないのかって?それはこの『ニンジャスレイヤー』、なかなか一筋縄ではいかない作品だからです。

 

2.特色編 ~「アイエエエ」って何?~

……さて、作品の中身のお話。このニンジャスレイヤーには特徴的な要素が4つあります。それを順番に見て行きましょう。

①特徴的な日本観

まず、ニンジャスレイヤーの舞台は『ネオサイタマ』です。多分これはAKIRAの『ネオ東京』と似たようなノリなのでしょうが、明らかにチョイスがおかしいです。埼玉です。しかし、舞台設定はシリアスです。以下に本編からの引用を試みます。

==引用==

世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネ技術が普遍化した未来。宇宙殖民など稚気じみた夢。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバー スペースへ逃避する。政府よりも力を持つメガコーポ群が、国家を背後から操作する。ここはネオサイタマ。鎖国体制を敷く日本の中心地だ。(@NJSLYR)

==引用ここまで==

はい。インターネット技術が当たり前に普及し、環境汚染が進行。巨大企業が経済を支配するという80年代に考えられたような未来のディストピア。それがネオサイタマです。サイバーパンクです。ギブスンです。ブレードランナーです。もっと言えばニューロマンサーです。

そしてサイバーパンクの伝統なのか、舞台の日本にはどこかおかしな所があります。ネオサイタマという地名もそうですが、スシがやたらと出てきたり、ヤクザがクローンだったり、みんな呼び方がさん付け(=サン表記)だったり。

 

ただ、同時にある程度日本に詳しくなければ思い付かないようなネタ……例えば、年功序列過労死、食品偽装。そういったシリアスな問題も(デフォルメされてはいますが)盛り込まれているのです。恐らく原作者はわざとやっています。

②オモシロ言語

『ニンジャスレイヤー』というタイトルを知らなくても、「アイエエエ」「ニンジャナンデ」のようなフレーズを何処かで目にしたことがあるかもしれません。「イヤーッ!」「グワーッ!」もそれです。この特徴的な言葉は「忍殺語」と呼ばれています。半ばネットミームの如く拡散している忍殺語ですが……

 

かなり人を選びます。Web上でチラっと見る分にはいい。でも、全編にわたってこれなのです。最初のうちは、読むのが大変かもしれません(腹筋的な意味でも)。翻訳者を殴り飛ばしたくなるかもしれません。けれどもそのうち、トンチンカンな日本語訳が①の要素と噛み合っていることに気付くでしょう。原文でも結構おかしいんですけど。

 

忍殺語について具体例を挙げると長くなるので、詳しくはファンの纏めたwikiなどを読んでください。ニンジャスレイヤーwiki『コトダマ』ページ: http://wikiwiki.jp/njslyr/?%A5%B3%A5%C8%A5%C0%A5%DE%A1%CA%A4%A2%B9%D4%A1%C1%A4%CA%B9%D4%A1%CB

Twitter故の制約

ニンジャスレイヤーはTwitter上で連載されています。それはつまり、最大140字で文節が切れる、ということです。これは文章に独特のリズム感を与えてもいますが、慣れないと読み辛い。加えて書籍版でもそのフォーマットは再現され、およそ140字ごとに区切れています。一昔前に流行ったケータイ小説が近いでしょうか?

こればっかりは御託を言っても仕方が無いので、本文のサンプルを見てみましょう。

 

ニンジャスレイヤー物理書籍サイト(試し読みページ):http://ninjaslayer.jp/trial/

 

こんな感じです。実物は縁取りが赤いですが。

更に、ニンジャスレイヤーのTwitter上で連載されたエピソードは有志によってtogetterに纏められていますが、これもtogetterはそもそも小説をまとめるように出来ていないため、やや読み辛いかもしれません。

(参考)『ゼロ・トレラント・サンスイ』:http://togetter.com/li/75597

④カットアップ

カットアップというのは大雑把には『テキストを(時系列で)シャッフルしてある』ということです。ニンジャスレイヤーではエピソード単位でこれが行われています。

つまりどういうことが起きるかというと……

 

書籍版の第一巻本文1ページ目が「これまでのあらすじ」で始まります。

ちょうど上にあるリンク、『ゼロ・トレラントサンスイ』はニンジャスレイヤーの中で一番最初に翻訳されたエピソードです。見事に「これまでのあらすじ」で始まっています。さて、そうすると当然疑問が出ると思います。

どこから『ニンジャスレイヤー』を読み始めればいいのか?

ニンジャスレイヤー翻訳チームの見解は『どこから読んでもいい』。

……はい。個人的な意見としては、取り敢えず『ゼロ・トレラント・サンスイ』を読んでみるのも良いのではないかと思います。

 

3.本編 ~ニンジャナンデ?~

ここまでが前振りです。漸くニンジャスレイヤーの核心の話に入ります。

ニンジャスレイヤーとは、大雑把に言ってしまえば復讐物です。妻子をニンジャに殺された主人公フジキド・ケンジが、自分もニンジャになって復讐しようとする……時代物小説ならまぁ、ギリギリ探せばあるかな?という筋立てです。

しかし、ニンジャスレイヤーの舞台は無慈悲なことに近未来の日本なのです。この矛盾を解明するには、ニンジャスレイヤーにおけるニンジャが何かということについて触れねばなりません。再び引用を試みます。

==引用==

ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
数千年前に彼らはキンカク・テンプルで謎のハラキリ儀式を行い、歴史からその姿を消した。
だが、時を超えて邪悪なるニンジャソウルが今、ネオサイタマの闇へと解き放たれたのだ!
ニンジャスレイヤーの死闘が今!始まる!

(『ニンジャスレイヤー』テレビCMより)

==引用ここまで==

……はい。ここまで引き伸ばした理由がお分かり頂けたのではないかと思います。

ちなみに、ここでニンジャスレイヤー未読の皆さんが味わった気持ちはNRS(ニンジャリアリティ・ショック)と本編中で定義されています。一般人がこういった「ニンジャ」の真実に触れると失禁、気絶などのショック症状を起こすのです。

ニンジャスレイヤーのニンジャというのは超人なのです。アメコミヒーロー、能力バトル物の能力者。ジョジョの「スタンド使い」と言えばわかりやすいかもしれません。非ニンジャの一般人は「モータル」(定命者)と呼ばれます。

『ニンジャスレイヤー』には様々な能力を持ったニンジャが登場し、そしてニンジャスレイヤーによって容赦なく爆発四散させられます(第二部辺りになると偶に容赦します)。ちなみに、ニンジャは死ぬとニンジャソウルの暴走で爆発四散する設定です。そして登場したニンジャは三部までで実に数百人。そんなに沢山覚えられない?でも安心です。そのうち七割位は登場したエピソードの間に爆発四散して二度と出てきません

主人公の活躍だけでなく、キャラクターとの一期一会を楽しむのも、ニンジャスレイヤーの一つの楽しみ方ではないかと思います。

 

4.入門編 ~どうすればいいの?~

ここまで読んだあなたは、きっとニンジャスレイヤーを読みたいという気持ちを持っている筈です。……そうでない場合は、多分途中で読むのを止めていると思います。

現在読めるニンジャスレイヤーは大きく分けて第一部~第三部があります。現在(2014年6月)書籍で出ているのが第一部と第二部の途中まで。Twitterで連載されているのは第三部。……といっても、翻訳チームの方針により第一部・第二部もtogetterで読むことができます。上に書いた『ゼロ・トレラント・サンスイ』もそうです。

この辺は有志のWikiにエピソード解説などが存在するので、そちらをご参照ください。個人的には、『レイジ・アゲンスト・トーフ』『キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー『マグロ・サンダーボルト』辺りが良いのではないかと思います。悩んだら、物理書籍一巻を買ってしまうのも手です。

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

 

 

え?いきなりTwitterで小説を読むのはハードルが高い?

そんな時にはコミカライズやドラマCDがあります。

コミカライズは、合計三本。それぞれテイストが異なり、全部読んでいるのは結構ディープなファンではないかと思います。特筆すべきこととして、ほぼ全部が雑誌以外にTwitterでも連載され、無料で読めるようになっています。

まず、余湖裕輝・田畑由秋コンビの描く『ニンジャスレイヤー』。これはコンプティークコンプエースの二誌で同時連載されています。最も「原作に近い」コミカライズと言えるでしょう。

次に、発表時、ニンジャヘッズ(ニンジャスレイヤーのファン)に衝撃を与えた『ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ』。キャッチフレーズは「グッドルッキングなニンジャとニンジャの顔が近い」。……お察しの通り、耽美系です。BLです(注:作者であるさおとめあげは先生は少女漫画と主張されています)。

ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ 1 (B's-LOG COMICS)

ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ 1 (B's-LOG COMICS)

 

最後に、原作から大胆なアレンジを加え、少年漫画のように再構築された『NINJA SLAYER 殺〈ニンジャスレイヤー キルズ〉』。特筆すべき点は「カットアップではない」ところ。時系列に沿って複数エピソードを連結・再構築するアレンジがなされているのです。カットアップがどうしても苦手、という人はこれを読んでみるのも良いかと思います。

(単行本はまだ出ていないので、掲載誌『水曜日のシリウス』へのリンク)

水曜日のシリウス NINJA SLAYER 殺:http://seiga.nicovideo.jp/comic/9754

 

そしてドラマCD……というかサウンドドラマですが、これも『ゼロ・トレラント・サンスイ』が公式にアップロードされ、何時でも聞けるようになっています。


ニンジャスレイヤー サウンドドラマ「ゼロ・トレラント・サンスイ」 - YouTube

Twitter版を読んだ方も、このサウンドドラマを聞くと新たな発見があると思います。……そこもまた、ニンジャスレイヤーの一つの肝なのです。

Twitter連載、物理書籍、コミカライズ、オーディオドラマ。ニンジャスレイヤーは様々なメディアで展開されていますが、一つとして「同じニンジャスレイヤー」は存在しません。たとえ同じタイトルのエピソードであっても。同じ名前のキャラクターであっても。それぞれが「違うニンジャスレイヤー」なのです。

最初は、気に入ったものだけ読むのをオススメします。でも、もし興味が出てきたら……違うメディアに触れてみると、新しい解釈やビジュアルがあなたを待っていることでしょう。

 

この記事があなたのニンジャヘッズライフの入り口となれば幸いです。